新人ナースの離職は個人の資質?

 

新人看護師の離職要因とリーダーシップ機能

遠藤知恵 (輔筆:西田公昭)

【目的】本研究の目的は新人看護師の離職を個人的・環境的要因から理解することである。ある病院に看護師として希望を持って就職したにも関わらず、心理的に追い込まれ将来の不利益などに対する懸念を抱きつつも忍耐を超えて辞めていく看護師が後を絶たない。この問題を解決することがこれからよりよい看護組織を理解することにもなり看護管理に重要な貢献となることと考える。過去の研究では新人看護師を対象にした苦悩やストレスの研究は多少見られるが、実際に離職した人を対象にしたものはほとんどない。そこで、本研究では初めて就職した病院を3年未満に辞めた看護職を対象にし、それらの人の離職プロセスについて心理学的に検討する。

【方法】第1研究は初めての就職から3年以内の離職看護師7名を対象として各1時間程度の半構成的個別面接を行った。第2研究では研究1で得られたデータをもとに質問紙を作成し、離職した看護師11名と辞めずに勤務を続けている看護師12名の合計25名を対象に留置法を用いた質問紙調査を行った。

【結果・考察】

 研究1では対象者はそれぞれ離職した病院で勤務していた時の個人的ならびに環境的事情を述べた。それらのコメントを図1に示す仮説モデルに沿って整理し、10の離職要因に分類した。その結果、考案した仮説モデルの妥当性が示唆された。しかし、新たなストレス要因として重症な患者と関わり、緊張状態を強いられたことと入職後の勤務時間外での課題との2つが見出された。

 また第2研究からは両者を比較した結果明らかな違いは見られなかった。しかし、離職者のほうが勤続者に比べパーソナリティでは否定的認知をしており、“眠れない”“食欲がなくなる”など身体的ストレス反応が多く、コーピングやコーピング資源を上手く活用できていないと自認している傾向が見られた。両者ともに労働過多を強いストレッサーとして認知している現状が示されたが、離職者のほうが“自分のイメージする職場と違う”とリアリティショックを強く感じていることと、初めからその病院の勤務は3年未満と考えていた人が多かった。

 さらに特筆すべき離職要因として、病気や体力的な問題など健康上の理由が最も多く、体調を崩し辞めざるを得ない状況での離職が多いことが分かった。つまり、新人看護師は、何とか続けいている者も離職者もいずれも強いストレス環境にある者が多いが、特に離職は、それが身体面に結果として表出したことがきっかけとなることが多いといえる。このことは、新人看護師の労働衛生面を考える上で、単に個人の「精神力」や「忍耐力」の欠如として片付けるような個人の資質問題でないことを示唆しているといえる。また、看護組織には、リーダーとして望ましいとされるPM型のリーダーを持つ者が少ないことが分かった。今後はそのようなリーダーを育成する体制も必要であり、特に新人のために仕事の計画を立て具体的に指示を出せる、P機能に優れたリーダーが求められていることが示唆された。

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