Familis November

やる気の心理メカニズム

 親は、子供に勉強させる苦肉の策で、「今度の試験で100点とったら、あれ買ってあげる」などと約束することがあります。しかし、この手が一番効果があると信じて、繰り返し使っていつのまにか効果をもたなくなってしまった経験はないでしょうか。そしてそれどころか、「あれを買ってくれたら、勉強するよ」と親に要求し、買う約束をさせられるまで、ちっとも勉強しないという困った経験はないでしょうか。

 子供がこういう要求を出す場合、ちゃんと計算して達成可能な目標をかかげています。一方、親が子供に要求する場合には、理想的なことを要求したり、現実での達成可能性を見据えて言っていないことがよくあります。こういう場合の動機づけは、成功する確率と失敗する確率が五分のときなら、挑戦してみようと思うのですが、たとえ得られる報酬がよくても、それより確率が下がるとやろうとする気持ちは下がるものです。そのへんの計算は年齢があがるにつれてしっかりしてくるので、最初の頃には無茶な要求でも挑戦していた子供も、達成できない経験をすると、だんだんとやる気を失ってくるのです。親としては、難しいぐらいのことに挑戦させて努力が報いられての大成功を望みたいところですが、一般にはやはり成功率50%が一番頑張りがきくのです。ただ、このようなやる気には、個人によってレベル差があり、高い子供はやや成功確率の低いことに果敢にも挑戦したがる傾向があります。それは、6歳から10歳ぐらいのある短い時期に、もっとも発達するのではないかという見解があります。

  ところで、このような方法で子供のやる気を起こさせることには、もう一つ重大な心配事があります。それは、なぜにやりたいのかという理由の持ち方に変化が生じてしまうことです。やる気の心理には、誰か外部から与えられる報酬を求めたり、罰を回避しようとして行動する場合と、もう一つには、自分の内面から発する自律的な好奇心や興味を追求する場合があります。つまり、親から何かをもらえたり叱られるから勉強するのは前者の場合であり、勉強して知識を身につけ、謎がとけたりすること自体が楽しくおもしろいからするのが後者の場合です。それで、外部から報酬や罰を受けることが習慣化しますと、もともと好きで自主的に勉強していた子供でも、せっかくの自発的な興味や関心を失ってしまうのです。そして謀らずも結局は、子供が勉強する理由は、何かもらえるからや罰を受けたくないからというふうに考えるようになり、罰や報酬によってでないと、動かなくなってしまうということになりかねません。

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